「長の年月」。ウィリアムスンの「スペンダーは喜んでる」という考えにワイルダー隊長が同意せず話題を逸らすところがとても好きだと気づきました。
「月は今でも明るいが」での、隊長の「スペンダーと隊員たちはダメだ(わかりあえない)」って言葉が、その話の中でスペンダーを理解できなかったという描写がないハザウェイまで例外ではなかったのだと身に沁みます。
スペンダーは火星に人が要らないと思っていたわけではなくて、火星人の残した”文化”(宗教、技術、諸々含むニュアンスで使ってます)を守りたかったわけなので、一度破壊され尽くした火星から人が消えたところで喜びはしないと思うんだ……(あくまでも私の解釈です)。そして、ワイルダー隊長もそういうふうに考えたから同意せずに話題を逸らしたのだと理解できる会話の流れ、とても良い。
そこでスペンダーは喜べないと言ったところでハザウェイには伝わらないので……。
あと、全体的な流れの話ですが、最初は互いを理解できなかった火星人と地球人が「夜の邂逅」くらいからじわじわと近づき始めて「火星の人」へと繋がっていくの本当に、本当に……よかったです(結局言葉が捻り出せずにいるけどよかった)。
その後、火星も地球も破滅を迎えてしまうのも、エゴの行き着いた先としてとても理解できるし、切ない。火星に移住した地球人がこぞって戦争の始まった地球に戻る描写は読者視点だとやめておけばいいのにと思ってしまったけど「鞄店」で書かれていたように結局移住して数十年では地球が”故郷”って感情が消えなかったんだろうなと伝わり、それがまた不可解さへの説得力になっているように思います。
一回呟いて少しまとめ直すだけのつもりが割とちゃんと感想になったわね。良き本でした。