麒麟は、王に命を託すことになる。
王が道を外した時、麒麟は病を患い死へ至る。
泰麒は麒麟として未熟な部分はあったけれど、そのことを知っていた。
終盤、罪を犯したという泰麒の姿を見るたびに考えた。
本当に、驍宗に天啓はなかったのか。
泰麒は罪を犯したのか。
そして、結末に心の底から安堵して、今、動かされた気持ちを整えるように感想を書いています。
まず、いかに十二国記が刺さってしまったのかという話をさせてください。
端的に申し上げますと、私の読書スピードが普段の3倍以上になりました。
厚さもあるので冊数で括るのもどうかなと思いつつ、私は大体1週間に1冊前後のペースで本を読むので、2日間で3冊は相当速いです。
そして「月の影 影の海」を読んだ時に既にとても面白いことを理解していたのに、今日「風の海 迷宮の岸」しか買って帰らなかったことを後悔しています。
どうして、最寄りで「黄昏の岸 暁の天」が売っていなかったからと、少し足を伸ばすのをやめて帰宅してしまったのか。
はやく、もっと読みたい。
さて、中身の感想を書きましょう。
「月の影 影の海」と「風の海 迷宮の岸」は、どちらも胎果のお話ですが、国へ来た時の気持ちのあり方が全然違っていて面白いなと思いました。
中嶋陽子も決して家庭に受け入れられていた子供ではなかったと思うけど、泰麒があの年齢で親と離れることを即座に受け入れてしまう環境で過ごしていたというのは、かなり苦しいものがありますね。
しかも、泰麒の人懐っこさを見ていると、どうしてこの子が友人に恵まれなかったんだろうという気持ちが湧いてしまうので困ります。
「風の海 迷宮の岸」の前半は、景麒と泰麒が関係を温めていく描写が特に好きでした。
景麒が泰麒へ示す不器用な優しさが身に染みました。そして「風の海 迷宮の岸」の時にも感じていた景麒の不器用さが、それでも改善された結果なのだと思うと愛おしくてたまらないです。
そして、そんな景麒に友人(弟?)と称しても良さそうな存在がいることも嬉しい。
「月の影 影の海」の時点で泰麒は王と共に失踪してしまっていたけれど、それがなければ、慶の異変と景麒のことをとても心配してくれたのではないかな〜と思いました。
エピローグの内容含め、友人関係が続いていますようにと願うばかりです。
後半は、もう、感想を書くことで感情を整えることを勿体なくすら感じるほどよかったです。
李斎さん、とても良い人。真面目で善良な武人さん。泰麒が懐く理由にも納得感しかありません。
最後まで気持ちの良い人だったので、ぜひ驍宗の後釜として空きの出来た将軍位におさまっていただきたいです。これはただの願望です。
驍宗さん、「中日までご無事で」と言われた時に今まであったはずの自尊心がボロボロになっていたと思うんですけど、何一つそのような素振りを見せずに泰麒を黄海まで連れていってあげてるの最高すぎました。
見ている角度がおかしい自覚はあります。
でも、白状すると私は、驍宗さんの感情に想いを馳せて何度か涙してました。
だって、誰もが「この人こそは」と思う方で、本人も立場的にも実力的にも自信があるのに、王の器ではないと宣告されているんですよ。今まで身を挺して国を守ってきただろうに、将軍位を返上して祖国を離れる決意を固めるほどにプライドが傷ついているんですよ。
でも、そんな素振りを何一つ外に出さずにカッコいい将軍の姿であり続けようとした姿がたまらなかったんです。
そんな状態で読み進めていたので、泰麒が罪だと思いながら驍宗さんを選んでから、泰麒の選択が正しかったと景麒の計らいで証明されるまでが苦しくて仕方なかったです。
冒頭に書いた事柄をぐるぐる考え、「高里要」という泰麒の名を知った時の緊張させないよう名を呼ぶ優しさに感動し、この人が傷つく未来が待っているかもしれないと落ち込み。感情が本当に忙しかった。
驍宗さんが本当は王の器でなかったら、その時こそ、この人の自尊心は粉々になってしまうのではないかと思って泣きました。
セリフがうろ覚えで申し訳無いのですが、思い詰めた泰麒を見ながら「私が麒麟を誑かしてしまったかもしれない」的なことを言ってる時とか、発狂してましたね。
景麒が泰麒からの告白を受けて驍宗さんに伝えた時の反応も最高すぎるんですよね。
「それでも自分は王だろうか」
ですよ。泰麒を責めず、むしろおそらく泰麒を誑かしてしまったのだと自分のことを責めるくらいの調子で、ただ国のことを思って発せられた言葉。
もう儀式は済ませてしまって王であるしか無いことをわかりながら、偽りで選ばれたことによって自分が上に立って良いのかを心配するその心の美しさが好きで仕方がありません。
そこまで書いてなかったです。行間を読みに読みまくっています。
とにもかくにも、とてもとてもよかった。
驍宗さんが最高すぎてほとんど触れられませんでしたが、泰麒の成長物語としても美しく心揺さぶられるお話でした。
最後にこれだけ言わせてください。
驍宗さんと泰麒は父と子です。
これからその絆を深め、泰麒が成長し、驍宗さんと少しずつ視点を共に会話できるようになる時が楽しみすぎます(果たして、そんな話はあるのでしょうか)。