やっと戴の国民を救いました……!!
もうね、苦しくて仕方ないです。読み終わってもまだ苦しい。
Twitterで散々騒いでいましたが、騒ぎ足りないので読書感想を書くことになりました。
「白銀の墟 玄の月」の前半は、私が大好きな「聖戦の系譜」を遊んでいる時の心の動きを思い出しながら読んでいました。
ままならない運命への諦め、それでも捨てられない希望の光。敵サイドの兵たちに滲む苦労。
あまり「どういうところが〜」と話し始めると「聖戦の系譜」のネタバレを語り出しそうなので自重しますが、とにかくシナリオというよりも、感情の動きが似ていました。苦しい……。
さて、そろそろ本題に入りたいのですが、どこから始めれば良いのでしょうか。
ひとまず、巻にはこだわらず、ゆるくテーマ毎に書いていこうと思います。
文章量が偏りますがご了承ください。記述が少ない箇所も、言葉にならないだけで大好きな場面のある場合がほとんどです。
未だに勢力図も地図も人名も覚えきれていないけれど、全体を通して苦しくて苦しくて、それでも好きでした。
李斎
李斎と李斎の麾下の絆よ。
李斎と共に死にに行こうとする麾下を諭す時のやりとりがね、最高でした。
李斎を守り切る飛燕の力強さと死でボロボロになっていた感情を引きずったまま、とどめを刺されてしまった感じです。
李斎さんの麾下と李斎さんの関係、好きだなあ。
信頼関係がとても伝わってくる。
李斎さんって本当に人柄がいいですよね。それはもうシリーズの2つめの戴の王を選ぶ話の時から散々語られているんだけど、人から愛される人だなと思うわけです。
あとね、土匪の朽桟との関係の築き方もいいですよね。
最初は土匪なんかって態度なのに、朽桟のことを知り認識を改めて、朽桟がピンチの時には義を重んじて助けに行く。
李斎さんは、間違えても正していける、そういう頼もしさと強さを感じます(黄昏の岸のときも、間違いに気づいて景王に兵を向けてはならないって言ってるからね……)。
この人についていけば大丈夫じゃなくて、この人と一緒に歩んでいきたいと思わせる人、大好きです。
耶利の主って誰?
私には正体不明の玄君だろうなというところまでしかわからなかったです。
泰麒が琅燦では?と聞いているけど、これはミスリードな気がするんですよね。
私は1回、普段やらかさない破茶滅茶誤読をして耶利ちゃんの主を勘違いしたので、とてもよく覚えてるの。2巻のやりとりを。
耶利ちゃんの主は、国と民を救い、玉座には驍宗様にいてほしいと願っている人なんですよ。
琅燦には、国と民の救済よりも大事なことがある様子だった(そのため阿選を唆している)ので、琅燦が耶利ちゃんの主だとしたら人格破綻も甚だしい気がする。
じゃあ誰なの?と聞かれると答えはないのだけれど……。
うーん、気になる。
驍宗と轍囲の絆
本文内にも書かれていましたが、驍宗さんは、幸運の積み重ねで命を繋いでいたことが印象的でした。
その中で特に心に沁みたのが、轍囲の民との絆です。
物語の中で、驍宗が道理を重んじて王の命令に対して轍囲を尊重する対応をしたことは、阿選との差を示す1つとして描かれていたと思います。
阿選は王の命令に常に忠実であり、驍宗様は民のことを考えていた、その差が顕著に現れている轍囲のエピソードが、驍宗様の命を繋ぐことにもなっていたなんて、最高すぎですよ。
轍囲の乱の当時の長のお孫さんだったかな(?)が、祈りのために貴重な食べ物を川に流しているのもさながら、その娘が私もって入れた大事なお手玉が、最終的に驍宗様の脱出に繋がっているの、嬉しいですね。
あと、お手玉を見た時の驍宗様が、薄暗い中でもちゃんと観察して贈り主の子の意図を汲もうとしているのも大好き。
消えた轍囲に立ったときの驍宗様を思うとやりきれない気持ちになります……。
阿選が王の座を盗んだ理由
阿選は王になりたかったわけではなかったと思う。驍宗に対して嫉妬していたわけでもなく、ただ自分の惨めさに失望して、プライドが粉々になっていて、そこから逃げ出したかったように感じました。
阿選を追い詰めたのは阿選の麾下だったのかもしれない。直接的な行動に至った理由は琅燦の言葉によるだろうけど、そこまで阿選を追い詰めたのは、驍宗と阿選を比較して阿選が優れているのだと言う、純粋な麾下からの尊敬だったように思うのです。
実際、息が詰まるようだった的な描写もありましたし。
そして、驍宗側に寝返った麾下もその可能性に薄らと気づいているのだろうな。
3巻かな。恵棟さんが、阿選のことを主だったと言った時にも、阿選が変わった可能性、最初から目が曇っていた可能性と共に、麾下が阿選を追い詰めた可能性に触れていたはず。
実際、追い詰めたのだと思います。
麾下が阿選が王に相応しいと言うのに、王として選ばれなかった事実ってプライドを刺激しますよね。
あの驍宗様でも、麒麟に選ばれなかった時に戴を離れる決意を一度固めているわけですから。
だから阿選はことを構える時に本当に大事にしている麾下には何も言えなかったし、説得されることにも耐えられなかったのでしょう。
だって、自分を一番だと思っている麾下に驍宗様こそ王に相応しいと言って見捨てられたら、それこそ立ち直れなくなってしまうでしょう。麾下を説得できる根拠もなく、自分のために驍宗を討ちたいなんて、言えるわけないんですよ……。
阿選にあったのは驍宗の影となることに耐えられないプライドであり、王になりたい気持ちではなかった(だから玉座を放棄した)。
驍宗と並び蓬山を登ることを恐れたのも、隣で驍宗が選ばれた瞬間に自分が影になることに耐えられなかったから。
阿選は阿選でしかないのに、驍宗の影となることが耐えられなかったんですよね。プライドが高い人だから。
こうして考えると、やはり阿選は王の器ではないんだなと思う。
自分の周囲しか見えてないから。
王になれなかった時、驍宗様のように自分の性格を理解して戴を離れる決断ができなかった時点で、阿選は資質のない側だったんだな、と思うんです。
阿選は比べられ影になることを嫌っていたけれど、物語で対比してるからやはり私も比べてしまう。
そして比べてから、「ああ、これがいつまでも続くのは耐えられないな」と納得するのでした。
恵棟さん
恵棟さん大好きです。
恵棟さんに対してワーワー騒いでるのは、こっちを見た方がわかりやすいです。
恵棟さんがとてもとても好きなの
これを書いた時の私は、まだ恵棟さんが廃人になってしまうことを知りません。
活躍した恵棟さんが李斎たちを助けて、阿選を討ちに戻る、そんな英雄譚を半ば期待していました。
どうして恵棟さんの呪符の効果を奪ってしまうの、阿選。
恵棟さんは、阿選にとっても大事な麾下だったんじゃないんですか……?
もう私の感情はボロボロです。
恵棟さんの好きなところは、リンク先に書いているのですが、とにかく善人なところです。
阿選の麾下でありながら、泰麒に心を尽くし、働きを認められたら素直に喜ぶその純朴さが愛おしかった。
阿選が王になることが耐えられずに、阿選の麾下でありながら泰麒のもとを去ろうとする、その強さが好きでした。
全部リンク先に書いた気がする。
それなのに、泰麒のそばを離れた恵棟さんは魂を抜かれて病んでしまった。
帰泉さんが魂抜かれて病んだ時も、モヤがかかったような状態で何かを思っていたようだから、きっと恵棟さんもそうなんだろうなと思うと、涙が止まらない。
「果たさなければならないことがあったはずなのに、どうして自分はこんなに非道なことをしているのか……」
みたいな。辛いです。
世界は純朴な善人に無慈悲である。
帰泉さんも、辛かったな。
最後までモヤのかかった思考の奥で阿選が喜んでくれることを願っていたのかと思うと涙が止まりません。
阿選は一体どれだけ麾下を傷つけたら気が済むのでしょう。心無い人に驍宗の影だと思われていても、阿選の麾下は、阿選を見て慕ってくれていたのに(涙)
誰が阿選を討つのか
終盤、残りのページ数で薄々察してはいたけれど、阿選を倒す場面までは書いてくれないんですね。
おかげで私の妄想が捗りに捗りますよ(※考察ではありません)。
個人的には、阿選の麾下の葛藤をずるずると引きずっているので、友尚さんが対峙の場面にいたら嬉しいなと思います。
驍宗様が討つのも最高ですが、驍宗様と阿選の物語はだいぶ語られていたし、やはりここは驍宗様側についた阿選の麾下に是非とも、と思ってしまいます。
驍宗様と対峙したところで阿選はただ自分の無力さを呪うことしかできない。
驍宗と対立する前の麾下に慕われていた阿選を思うと、阿選の最後は、持っていながら手放してしまったものを見て欲しいと思うんですよね。
だから、お願いします友尚さん。
友尚さんがいい理由はもう一つありまして、4巻終盤の友尚さんの言葉が最高だったんですよ。
道を誤った主を共に死地へ連れていくのが麾下の務めだ(意訳)と言っている場面で、「阿選様」と言うのが好きすぎる。
だから、友尚さんが最後に阿選に気づきを与える存在であって欲しいと言う妄想に取り憑かれているわけです。
友尚さんが阿選に、あなたのことを慕っていたと、過去形で語りかけ、阿選が自分のことしか見ずに手放してしまったものに気づかせてほしいし、阿選には、少しだけ昔の麾下に優しい阿選を取り戻して、友尚に微笑みかけてから、友尚の構える剣に自ら歩み寄る感じで貫かれてほしい。
最後の方の阿選さんを見ていると過ちを重ねて最後まで逃げようとしそうな印象も受けるけど、元々プライドの高い方(だと思う)ので、かつての麾下を前に、最後くらいカッコよくあろうとしてもいいと思うんです。
最後くらい、麾下の誇れる主君の姿を取り戻して欲しいよ……。
全部妄想コーナーでした。
驍宗様と泰麒の再会!!!
さて、まだ書ききれてないところばかりですが、一通り語ったところでお待ちかねのメインディッシュです!(?)
いやだって、こんなの、好きに決まってます。
私は叫びました。
再会した時の驍宗様のセリフが、最高で最高で、このシーンが見れただけでも4巻分の苦しさにうめいてきた甲斐があるなと思ったほどに最高でした。
「……蒿里か」
で最高すぎて30分くらい読書を中断して噛み締め、よし次だと思って読書を再開した直後の
「……大きくなったな」
で涙腺をべちょべちょにして一回深呼吸をし、
「よくやった。——もう良い」
で復旧不可能な興奮を得ました。
とりあえず、4巻384p〜を読んでください。
よろしくお願いします。
この場面を何も言葉にできていない。
あの、もはやうまく例えることもできないけれど、首を絞められながら優しくされたらこんな感情になると思います……。
まず、もはや希望がほとんどない、驍宗様の名誉を守るための、死ぬの覚悟の行動をしている場面じゃないですか(苦しい)。
おまけに泰麒が驍宗様と今まで自分が救えず奪った命のために自らの手で殺傷をするという前代未聞の行為をしている時点で胸がきゅっとなるんですよ。
そんな状態なのに、ようやく再会できた王と麒麟の短いけれど信頼や愛情を感じる言葉のやり取りを見るじゃないですか。
心温まりながら苦しいんですよ。
どうしたらいいんですか、私はこの感情をどこにやったらいいんですか。
書きながら思い出し苦しいして泣きそうです。
ありがとうございました。
結局書くのを諦めています。
どうか、どうか読んでください、読み返してください。
総括
十二国記を読み終わった生活に耐えられないので、他の国の話も読もうと思います。
多分延の話を飛ばしているのでそれを読むのと、華胥の夢の読めそうな国の話を読むのとで、この喪失感を補いたい。
ありがとう十二国記。
出会えてよかった、大好き。