感想メモ 2025/04/11 Fri 喪失を知る者たち#まほやく ※2部ラスティカ周辺のネタバレがあります※犬使いのバラッド、散花奏でる涙のオブリガートの話をしてます続きを読むまだまだ読めていないイベントストーリーも沢山あるのですが、図らずも、今のところ特に好きなイベストが、愛する者の喪失を知る人が主役の物語であることに気づきました。※ボリュームがレベル違いな周年イベスト以外で考えてます。その、特に好きなイベストというのが、・極光祈る犬使いのバラッド・散花奏でる涙のオブリガート他にもレノックスのフルコース食べる話(言葉通りなんだけど話知らないとホラー表現だな)とか、ひまわりのエチュード、パラドックスロイドあたりも結構好きなんですけど、今のところ、物語にお気に入りつけたのが犬使いと散花なのです。そして、この2つはどちらも、愛する者を失った悲しみを知る者が、悲しみの中でとった行動と向き合い、一歩前進する話なんですよね。犬使いは、オズが。散花はラスティカを演奏会に招いた貴族とその使用人が。喪失を堪えるための、ともすれば過ちともとれる行動と向き合う話なんです。***犬使いで明かされたのは、喪失に耐えられず忘却しようと、アーサーがいた痕跡を消し去ろうとしたオズ様の過去。そして、その事実をアーサーに知られることを恐れて、怖がるオズ様の姿。この物語、怯えるオズに直接頼られた賢者様以外で、真っ先にオズ様の過去の行動理由に気付いたのはラスティカなんですよね。この時のラスティカは、悲しみの乗り越えかたを知らないけれど、忘却によって人が後悔への許しを得られることは知っているんだなあ(忘却は最後の許しを忘れっぽいラスティカに言わせるの重いって……)。ラスティカは人の言葉や行動を肯定的に捉えようとする人だから、オズ様の行動を肯定的に解釈した結果、いち早くその心にも気付けたのかもしれない。脱線しました。話をオズ様に戻します。かつてオズ様は、喪失の悲しみを堪えるために、アーサーの痕跡を灰にしてしまった。犬使いの中でオズ様は、その過去をアーサーに知られることを恐れていました。けれど隠すこともできずに、アーサーに悲しみの末とった行動の結果を知られてしまう。オズ様、世界征服をしようとした過去とかにも負い目を感じているから、知られた直後に素直に寂しくて燃やしてしまったなんて言えないんですよね。それで、不運にもその場にムルがいたこともあり、こじれ、大事になり、またアーサーには知られたくないような行動をとってしまい……。だけどカインが誤魔化して庇ってくれた。後述する散花の中でラスティカが果たした役目が、犬使いのカインの動きだったのかなと思います。過ちと向き合うための緩衝材といえばいいのかな。カインは多分、真実と誤魔化しを天秤にかけて、伝えるべきではないと判断したのでしょう。同じ賢者の魔法使いとしてオズ様の信頼を得るのは大事だし、主君兼友人のことを無闇に傷つけたくないから。オズを信じて、オズの凶暴性を隠した。カインと賢者の判断で、今後のオズとの関係性が大きく変わってしまう状態だったけど、さすがの判断である。会話のとっさの機転により、オズはアーサーと絆を繋ぎ直せたんですよね。突きつけられた喪失の悲しみを時間をかけて癒し、その中でとってしまった行動への後悔と向き合い、一歩前進できたんです。私の言葉でまとめ直すとなんか弱いな。実際の物語はもっと素敵です。***さて、散花の話へ移ります。散花で喪失に苦しむのは、とある領主と一人の使用人。二人は領主の奥様が事故で亡くなったことによって、苦しみの中にいました。正確には、領主は喪失の苦しみから目を逸らしていた。彼は、妻の喪失と同時に現れたバズゴアという怪物を、己の妻だと思うことで心を保っていたのです。バズゴアは、暴れると手がつけられなくなる怪物。そのせいで、使用人はただ一人を残してみんな去り、城も荒れ果て、領主も怪我をしているような状況でした。一方で、バズゴアは間違いなく領主の心を喪失から守ってもいました。バズゴアと領主を見たオズ様の語る喪失の輪郭が鮮明すぎる。長生きをしているのに、人との関わりが少なかったオズ様は、ともすれば口数少ない子供らしい印象を受けることもあるのに、今回は自分が体感してきたもののように語るのですよね。オズ様は喪失をよく知っている。13歳のアーサーを失い、そして心を守るためにアーサーのものを燃やしてしまった人だから、領主の苦しみもわかるのでしょうね。ともかく、状況は複雑です。領主が妻だと思っているものが怪物だという秘密を守れば、領主の心は守られる。けれど、真実を明らかにしなければ領主も領民も危険に晒され、使用人も苦しいまま。そんな立ち行かない状態のなかで、真実を明かすか、明かさないか、その決断を預かったのがラスティカでした。彼は何度も何度も状況を天秤にかけて、結論を出します。僕が、真実を……。喪失を、教えましょう。2部のラスティカを知っているプレイヤーの心に響く決断です。ラスティカ、記憶は失っているけれど、愛する花嫁が怪物になった時、民を守るために己の手で殺す決断をした人だから……。そして、この喪失の教え方が、ラスティカらしい優しさに満ちていて素敵なんですよね。ただ言葉で教えるのではなく、奥様と領主の思い出を大切にして、ほころびを優しく突きつけていくんです。妻が怪物だと口にすることなく、ラスティカは領主様自身の心に、妻が怪物だと気づかせました。きっと、クロエから悲しみの乗り越え方を教わったラスティカだからこそ、領主の心に寄り添いながら、喪失を教えられたのでしょうね。けれど、皮肉だなとも思います。だって、当のラスティカ自身は己の喪失と向き合えずに記憶を失ったままなのだもの。悲しみの乗り越え方を知る前のように取り乱すことはなかったけれど、他人が喪失と向き合い失った後の人生を生きていくための手助けをしていながら、ラスティカ自身はずっと忘れたまま。物語の中で喪失と向き合い前へ進めた者たちを支えた立役者が、最愛の妻の喪失を忘れて、妻を探しながら生きているなんて。そんな悲しさも含めて好きなお話でした。こっちも、私の言葉でまとめ直すとなんか弱いな。実際の物語はもっと素敵です。***余談2部のラスティカが、一度思い出した記憶を失ってしまったのが、なんとも悲しいなあと思えてならない。覚えていると生きていられなかったから、ラスティカは忘却によって許されたのだろうけれど、クロエから悲しみを乗り越える方法を知ってなお、覚えていられない経験を人生の中でしてしまったんだなって……(いやもう内容を考えればそうですよねと頷くしかないけれども)。ラスティカの優しさに触れるたび、ラスティカの今が忘却という危うさによって成り立っていることを考えて、悲しくなってしまうのでした。オズ様は、過去の後悔を含めてアーサーに受け入れてもらえているから、良かったねと思います。畳む
#まほやく
※2部ラスティカ周辺のネタバレがあります
※犬使いのバラッド、散花奏でる涙のオブリガートの話をしてます
まだまだ読めていないイベントストーリーも沢山あるのですが、図らずも、今のところ特に好きなイベストが、愛する者の喪失を知る人が主役の物語であることに気づきました。
※ボリュームがレベル違いな周年イベスト以外で考えてます。
その、特に好きなイベストというのが、
・極光祈る犬使いのバラッド
・散花奏でる涙のオブリガート
他にもレノックスのフルコース食べる話(言葉通りなんだけど話知らないとホラー表現だな)とか、ひまわりのエチュード、パラドックスロイドあたりも結構好きなんですけど、今のところ、物語にお気に入りつけたのが犬使いと散花なのです。
そして、この2つはどちらも、愛する者を失った悲しみを知る者が、悲しみの中でとった行動と向き合い、一歩前進する話なんですよね。
犬使いは、オズが。
散花はラスティカを演奏会に招いた貴族とその使用人が。
喪失を堪えるための、ともすれば過ちともとれる行動と向き合う話なんです。
***
犬使いで明かされたのは、喪失に耐えられず忘却しようと、アーサーがいた痕跡を消し去ろうとしたオズ様の過去。
そして、その事実をアーサーに知られることを恐れて、怖がるオズ様の姿。
この物語、怯えるオズに直接頼られた賢者様以外で、真っ先にオズ様の過去の行動理由に気付いたのはラスティカなんですよね。
この時のラスティカは、悲しみの乗り越えかたを知らないけれど、忘却によって人が後悔への許しを得られることは知っているんだなあ(忘却は最後の許しを忘れっぽいラスティカに言わせるの重いって……)。
ラスティカは人の言葉や行動を肯定的に捉えようとする人だから、オズ様の行動を肯定的に解釈した結果、いち早くその心にも気付けたのかもしれない。
脱線しました。話をオズ様に戻します。
かつてオズ様は、喪失の悲しみを堪えるために、アーサーの痕跡を灰にしてしまった。
犬使いの中でオズ様は、その過去をアーサーに知られることを恐れていました。
けれど隠すこともできずに、アーサーに悲しみの末とった行動の結果を知られてしまう。
オズ様、世界征服をしようとした過去とかにも負い目を感じているから、知られた直後に素直に寂しくて燃やしてしまったなんて言えないんですよね。
それで、不運にもその場にムルがいたこともあり、こじれ、大事になり、またアーサーには知られたくないような行動をとってしまい……。
だけどカインが誤魔化して庇ってくれた。
後述する散花の中でラスティカが果たした役目が、犬使いのカインの動きだったのかなと思います。
過ちと向き合うための緩衝材といえばいいのかな。
カインは多分、真実と誤魔化しを天秤にかけて、伝えるべきではないと判断したのでしょう。
同じ賢者の魔法使いとしてオズ様の信頼を得るのは大事だし、主君兼友人のことを無闇に傷つけたくないから。
オズを信じて、オズの凶暴性を隠した。
カインと賢者の判断で、今後のオズとの関係性が大きく変わってしまう状態だったけど、さすがの判断である。
会話のとっさの機転により、オズはアーサーと絆を繋ぎ直せたんですよね。
突きつけられた喪失の悲しみを時間をかけて癒し、その中でとってしまった行動への後悔と向き合い、一歩前進できたんです。
私の言葉でまとめ直すとなんか弱いな。
実際の物語はもっと素敵です。
***
さて、散花の話へ移ります。
散花で喪失に苦しむのは、とある領主と一人の使用人。
二人は領主の奥様が事故で亡くなったことによって、苦しみの中にいました。
正確には、領主は喪失の苦しみから目を逸らしていた。
彼は、妻の喪失と同時に現れたバズゴアという怪物を、己の妻だと思うことで心を保っていたのです。
バズゴアは、暴れると手がつけられなくなる怪物。
そのせいで、使用人はただ一人を残してみんな去り、城も荒れ果て、領主も怪我をしているような状況でした。
一方で、バズゴアは間違いなく領主の心を喪失から守ってもいました。
バズゴアと領主を見たオズ様の語る喪失の輪郭が鮮明すぎる。
長生きをしているのに、人との関わりが少なかったオズ様は、ともすれば口数少ない子供らしい印象を受けることもあるのに、今回は自分が体感してきたもののように語るのですよね。
オズ様は喪失をよく知っている。
13歳のアーサーを失い、そして心を守るためにアーサーのものを燃やしてしまった人だから、領主の苦しみもわかるのでしょうね。
ともかく、状況は複雑です。
領主が妻だと思っているものが怪物だという秘密を守れば、領主の心は守られる。
けれど、真実を明らかにしなければ領主も領民も危険に晒され、使用人も苦しいまま。
そんな立ち行かない状態のなかで、真実を明かすか、明かさないか、その決断を預かったのがラスティカでした。
彼は何度も何度も状況を天秤にかけて、結論を出します。
2部のラスティカを知っているプレイヤーの心に響く決断です。
ラスティカ、記憶は失っているけれど、愛する花嫁が怪物になった時、民を守るために己の手で殺す決断をした人だから……。
そして、この喪失の教え方が、ラスティカらしい優しさに満ちていて素敵なんですよね。
ただ言葉で教えるのではなく、奥様と領主の思い出を大切にして、ほころびを優しく突きつけていくんです。
妻が怪物だと口にすることなく、ラスティカは領主様自身の心に、妻が怪物だと気づかせました。
きっと、クロエから悲しみの乗り越え方を教わったラスティカだからこそ、領主の心に寄り添いながら、喪失を教えられたのでしょうね。
けれど、皮肉だなとも思います。
だって、当のラスティカ自身は己の喪失と向き合えずに記憶を失ったままなのだもの。
悲しみの乗り越え方を知る前のように取り乱すことはなかったけれど、他人が喪失と向き合い失った後の人生を生きていくための手助けをしていながら、ラスティカ自身はずっと忘れたまま。
物語の中で喪失と向き合い前へ進めた者たちを支えた立役者が、最愛の妻の喪失を忘れて、妻を探しながら生きているなんて。
そんな悲しさも含めて好きなお話でした。
こっちも、私の言葉でまとめ直すとなんか弱いな。
実際の物語はもっと素敵です。
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余談
2部のラスティカが、一度思い出した記憶を失ってしまったのが、なんとも悲しいなあと思えてならない。
覚えていると生きていられなかったから、ラスティカは忘却によって許されたのだろうけれど、クロエから悲しみを乗り越える方法を知ってなお、覚えていられない経験を人生の中でしてしまったんだなって……(いやもう内容を考えればそうですよねと頷くしかないけれども)。
ラスティカの優しさに触れるたび、ラスティカの今が忘却という危うさによって成り立っていることを考えて、悲しくなってしまうのでした。
オズ様は、過去の後悔を含めてアーサーに受け入れてもらえているから、良かったねと思います。
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