FE 2022/12/01 Thu ナバールとマルス(小話)今書いてる話の中での機能を失ってカットしたシーンを供養します……。気に入ってるので……。書いてる話はオグナバ前提です。#アカネイア続きを読む (シーンに繋がるあらすじ)マケドニアで負傷したナバールは、意識を失う直前に抱いた感情で、オグマに抱いている感情を改めて自覚した。傷を癒すナバールを、戦いを終えたマルスが訪ねてくる。••• ナバールが司祭を見つけ傷を癒している間に、マケドニア王ミシェイルを倒し、ガーネフも討ってきたと、マルスは言った。 激しい戦いだったはずだ。ミシェイルは大陸一の飛竜の使い手と名高く、前にカダインでみたガーネフの魔法マフーも、今までに見たことがないほど強力だった。直接的な魔法攻撃の範囲外にまで伝わってくる圧迫感ある風。深く抉れた大地。焦げた匂い。 想像に難くない激闘の後でも、マルスは疲れ一つ見せずに笑いかけてきた。「ナバール、無事で良かった」 つくづくお人好しだ。ナバールはまだ鈍く残る痛みを顔に出さず立ち上がった。「務めは果たす。そういう契約だ」「怪我は平気なのかい?」「もう治った」 マルスに構いもせず扉へと向かう。「よかった。それなら次の戦いはキミを頼みにできるね。期待しているよ」 期待、という言葉に反応してナバールは振り返った。「期待……か」 マルスは挨拶をするように他者へ期待を寄せる。だが、重ねた期待が叶わずに苦しむ姿は見たことがなかった。「お前はどうしてそう簡単に期待できる。苦しくないのか」 問いかけに、マルスはきょとんと目を丸めた。「苦しい?」「期待をしても、叶わぬ苦しみが募るだけではないのか?」「けれど、きみは務めを果たすと言った。ならばそれを信じることが、命を預かるわたしの務めだよ」「使命感だけで期待するのか」 追求すると、顎に手を添えてマルスはうなった。青年の顔にあどけなさが映る。マルスは個人として人に向き合う時、必ず年相応の若さを顔に宿した。「それは違う……かな。使命もあるけれど、それ以上にぼくが皆を信じたいんだ。信じた結果裏切られることになったとしても、最初から信じないよりもずっといい」 マルスの言葉はほとんど理解できなかった。真剣な瞳が迷いなくナバールの姿を反射している。無言でその瞳を見つめ返していると、マルスは続けた。「ぼくは皆の期待があるから困難な局面でも踏ん張ってこれた。だから、皆が戦っている時にも、ぼくの期待が皆の力の一助になってほしいと願っているんだ」「わからんな」「ぼくときみは違うから」「わからないが、お前の考えは悪くない」 マルスは木漏れ日のように柔らかい笑顔を見せた。「ナバールは、出会った頃より丸くなったね」「オレが変わったように見えるのか」「だいぶ。今のきみなら握手をしてくれそうだ」「握手か……」 呟きながら手のひらを見つめた。どちらの手も剣で皮膚が硬くなっている。お世辞じゃないが、握り心地の良さそうな手ではない。 マルスはいつの間にか目の前に立ち、手を差し出していた。「ナバール、今更だけど……」「この戦いが終わるまでだ」 ナバールは自分より一回り小さい手を握った。 マルスの手もナバールほどではないが硬かった。昔から剣を手にしてきた者の手だ。軍の代表でありながら、前に立ち剣を振る姿が思い出される。「ありがとう」 微笑むマルスを背にナバールは部屋を出た。 触れた手の感触がいつまでも残っている気がして、むず痒かった。畳む
今書いてる話の中での機能を失ってカットしたシーンを供養します……。気に入ってるので……。書いてる話はオグナバ前提です。
#アカネイア
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(シーンに繋がるあらすじ)
マケドニアで負傷したナバールは、意識を失う直前に抱いた感情で、オグマに抱いている感情を改めて自覚した。
傷を癒すナバールを、戦いを終えたマルスが訪ねてくる。
•••
ナバールが司祭を見つけ傷を癒している間に、マケドニア王ミシェイルを倒し、ガーネフも討ってきたと、マルスは言った。
激しい戦いだったはずだ。ミシェイルは大陸一の飛竜の使い手と名高く、前にカダインでみたガーネフの魔法マフーも、今までに見たことがないほど強力だった。直接的な魔法攻撃の範囲外にまで伝わってくる圧迫感ある風。深く抉れた大地。焦げた匂い。
想像に難くない激闘の後でも、マルスは疲れ一つ見せずに笑いかけてきた。
「ナバール、無事で良かった」
つくづくお人好しだ。ナバールはまだ鈍く残る痛みを顔に出さず立ち上がった。
「務めは果たす。そういう契約だ」
「怪我は平気なのかい?」
「もう治った」
マルスに構いもせず扉へと向かう。
「よかった。それなら次の戦いはキミを頼みにできるね。期待しているよ」
期待、という言葉に反応してナバールは振り返った。
「期待……か」
マルスは挨拶をするように他者へ期待を寄せる。だが、重ねた期待が叶わずに苦しむ姿は見たことがなかった。
「お前はどうしてそう簡単に期待できる。苦しくないのか」
問いかけに、マルスはきょとんと目を丸めた。
「苦しい?」
「期待をしても、叶わぬ苦しみが募るだけではないのか?」
「けれど、きみは務めを果たすと言った。ならばそれを信じることが、命を預かるわたしの務めだよ」
「使命感だけで期待するのか」
追求すると、顎に手を添えてマルスはうなった。青年の顔にあどけなさが映る。マルスは個人として人に向き合う時、必ず年相応の若さを顔に宿した。
「それは違う……かな。使命もあるけれど、それ以上にぼくが皆を信じたいんだ。信じた結果裏切られることになったとしても、最初から信じないよりもずっといい」
マルスの言葉はほとんど理解できなかった。真剣な瞳が迷いなくナバールの姿を反射している。無言でその瞳を見つめ返していると、マルスは続けた。
「ぼくは皆の期待があるから困難な局面でも踏ん張ってこれた。だから、皆が戦っている時にも、ぼくの期待が皆の力の一助になってほしいと願っているんだ」
「わからんな」
「ぼくときみは違うから」
「わからないが、お前の考えは悪くない」
マルスは木漏れ日のように柔らかい笑顔を見せた。
「ナバールは、出会った頃より丸くなったね」
「オレが変わったように見えるのか」
「だいぶ。今のきみなら握手をしてくれそうだ」
「握手か……」
呟きながら手のひらを見つめた。どちらの手も剣で皮膚が硬くなっている。お世辞じゃないが、握り心地の良さそうな手ではない。
マルスはいつの間にか目の前に立ち、手を差し出していた。
「ナバール、今更だけど……」
「この戦いが終わるまでだ」
ナバールは自分より一回り小さい手を握った。
マルスの手もナバールほどではないが硬かった。昔から剣を手にしてきた者の手だ。軍の代表でありながら、前に立ち剣を振る姿が思い出される。
「ありがとう」
微笑むマルスを背にナバールは部屋を出た。
触れた手の感触がいつまでも残っている気がして、むず痒かった。
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